わたしが出会った本

第1回 小宮輝之さん2009年10月

第1回 小宮輝之さん
小宮 輝之(こみや てるゆき)
1947年東京生まれ。72年、多摩動物公園に就職、日本産動物と家畜の飼育係になる。井の頭自然文化園飼育係長、多摩動物公園飼育課長、上野動物園飼育課長を経て2004年より上野動物園園長。クマの飼育経験から、ツキノワグマの冬眠展示を成功させる。尾長鶏や見島牛、木曽馬などの日本在来家畜・家禽を飼育展示し保存にも力を入れる。2008年より地球温暖化により絶滅が心配されるライチョウの域外保全の取り組みを開始。主な著書に『日本の哺乳類』『日本の野鳥』『日本の家畜・家禽』(共に学習研究社)『原寸どうぶつ図鑑』(宝島社)『ウサギのかいかたそだてかた』『メダカのかいかたそだてかた』(共に岩崎書店)などがある。

本との思い出

子ども時代の本との出会い


私は、物心がついたときから動物が好きで、ずっと動物園で働きたいと思っていました。最初に動物園に行ったのは2歳の時です。きおくは全然ないのですが、そのころからゾウが好きだったと母親が言っていました。それと、昆虫(こんちゅう)やカエルなど生き物をつかまえて育てることが好きでした。

子どものころは『ファーブル昆虫記』や『シートン動物記』も読みましたが、やっぱり好きだったのは、動物図鑑(どうぶつずかん)です。一番思い入れが深かったのは、10才ぐらいの時に親に買ってもらった『動物の図鑑』と『世界の動物の図鑑』の2冊です。

『動物の図鑑』は地域別、『世界の動物の図鑑』は動物の種類別に書かれてありました。
「インドに行ったらこういう動物がいるのかなぁ」とか、オカピは「いつか本物を見たいな」と思いながら読んでいました。(最近、日本の動物園にも飼育されています。)でも、図鑑を読んでいたというより、ながめていたという感じです。図鑑を見ながら動物の名前をほとんど暗記していました。そのうち、いろいろな図鑑を集めだし、子どものころだけでも何十冊も持っていたと思います。今では、ひと部屋丸々図鑑です。中学校、高校に行ってもずっと図鑑を集めていて、そのうち外国の図鑑も集めるようになりました。中学生の時は、英語がきらいだったのですが、図鑑の英語だけは一所懸命(いっしょけんめい)読んだものです。



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写真左) 学研図鑑シリーズ⑪
      『動物の図鑑』 
      共著/古賀 忠道、小泉 吉典、小森 厚
      1958年刊 (小学館)

写真右) 講談社の学習大図鑑⑩
      『世界の動物の図鑑』
      著編/林 寿郎
      1959年刊 (講談社)  

 

 


図鑑と今の仕事のつながり


私にとって図鑑は楽しむだけでなく、仕事に使う本でもあります。例えば、図鑑の中に山の渓流(けいりゅう※1)に鳥がいる様子が描いてあって、同じような場面を動物園の展示(てんじ)で再現したいと考えたりしています。図鑑を見ていると、動物園をよりおもしろくするアイデアがわいてきます。

だから、図鑑は一回読んで終わりではありません。一般的(いっぱんてき)には50年前の図鑑はすててしまうでしょうが、何度も見直しているから今でも持っています。この図鑑が今の動物園の仕事の原点みたいなものかもしれません。

今、一番うれしいことは、動物園で働いていることもそうですが、自分が図鑑を作れるようになったことです。いろいろな図鑑を見てきて、自分で図鑑を作りたいと思い描くようになりました。例えば、『世界の動物の図鑑』に載っていた家畜(かちく※2)の話が、小さいころからずっと気になっていました。最近『日本の家畜・家禽(かきん※3)』という家畜の図鑑を作りましたが、そういった図鑑づくりにたずさわることができることはとても幸せです。

medakanokaikatasodatekata.jpg私が書いた本の中では『メダカのかいかたそだてかた』などの「かいかた」シリーズがおススメです。このシリーズでは飼い方だけでなく、動物の住む環境や生態(※4)のことについてもきちんと解説して書きたいと思いました。この本は、メダカの本の表紙なのにトキの絵を描いているのは、このままだとトキ(※5)のようにメダカもいなくなる可能性があることを伝えたいからです。

写真左) 『メダカのかいかたそだてかた』
      著/小宮 輝之
      絵/浅井 粂男
      (岩崎書店)

 


これからの夢と子どもたちへ

私のこれからの夢は、動物の足あと図鑑を作りたいです。今、いろいろな動物の足あとが、500種類ぐらい集まっています。図鑑で動物を見て、この動物を飼いたいなとチェックしたり、足あとを集めだしたりすると、徹底的(てっていてき)に集めたりします。足あとのほかに、動物のふんの写真も集めています。動物のことになるとなんでも夢中になれます。

 

私は、子どものころは他のことは多少できなくても、何か好きなことがあればいいと思います。もしかすると私の、動物の足あとコレクションは日本で10番以内に入るかもしれないし、ふんの写真を集めているのは世界で10番以内に入るかもしれません。好きな本を一所懸命読んでいると、自分の書きたい本が思いつくようになるかもしれない。自分の好きなことをすれば、それがきっと未来につながっていくと思います。


※1 山地を刻む小谷の流れ。谷川。  ※2 人間が生活に役立てるために飼育する動物。牛、馬、鶏、羊、豚・犬など。 ※3 家畜として飼育される鳥。ニワトリ、アヒルなど。 ※4 生物が自然環境のもとで生活しているありさま。 ※5 コウノトリ目トキ科の鳥。全身が白色の羽毛におおわれ、後頭部に長い冠羽(かんむりばね)がある。日本では1981年(昭和56)に野生種は絶滅し、現在、中国陝西(せんせい)省ではんしょくが確認されているのみ。特別天然記念物および国際保護鳥。

みんなのおたより

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